部品図・バラシ図とは?用途や作成ポイントをわかりやすく解説

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【機械設計の基本】部品図・バラシ図とは?用途から作成ポイントまで徹底解説

機械設計において、製品を構成する個々の部品を詳細に表現する「部品図」と、製品全体の構造や組み立て手順を示す「バラシ図(分解図)」は、製造や組み立ての現場にとって不可欠な図面です。しかし、これらの図面が具体的にどのような役割を果たし、作成する上でどのような点に注意すべきか、曖昧に感じている方もいるかもしれません。

本記事では、部品図とバラシ図の基本的な定義から、それぞれの用途、そして正確かつ効率的な図面を作成するための重要なポイントまで、初心者の方にもわかりやすく解説します。機械設計に携わる方はもちろん、製造や組み立ての現場で図面に触れる方も、ぜひ本記事を通して理解を深めてください。

1. 部品図とは?~一個の部品を詳細に示す設計図~

部品図とは、機械製品を構成する一つひとつの部品の形状、寸法、材質、表面処理、公差、注記など、製造に必要なあらゆる情報を詳細に記述した設計図です。製品を構成する全ての部品に対して、それぞれ個別の部品図が作成されます。

部品図の主な用途:

  • 部品の製造: 工作機械による切削、板金加工、鋳造、樹脂成形など、部品を製造するための指示書となります。
  • 品質管理: 製造された部品が設計図通りの寸法や精度で仕上がっているかを確認するための基準となります。
  • 検査: 部品の受け入れ検査や出荷検査において、合否判定の基準となります。
  • 修理・メンテナンス: 部品交換が必要になった際、正しい形状・寸法の代替部品を特定するために利用されます。

2. バラシ図(分解図)とは?~製品全体の構造と組み立て手順を示す図~

バラシ図(分解図)とは、完成した機械製品を構成する全ての部品を、組み立てられた状態から分解したように配置し、部品同士の関連性や組み立て手順を示す図面です。通常、部品には符号や番号が付与され、組み立て順を示す線や矢印が追記されます。

バラシ図の主な用途:

  • 製品の組み立て: 製造された部品をどのように組み付けるかの手順を示す、組み立て作業の指示書となります。
  • 部品のリスト化: 製品を構成する部品の種類と数量を一覧で把握するために利用されます(部品表と合わせて用いられることが多いです)。
  • 修理・メンテナンス: 製品の分解手順や、どの部品がどこに配置されているかを示すため、修理や部品交換の際に役立ちます。
  • 取扱説明書: 製品の構造や部品構成をユーザーに理解してもらうための図として、取扱説明書に掲載されることがあります。

3. 部品図作成の重要なポイント

正確で分かりやすい部品図を作成するために、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 適切な投影図の選択: 部品の形状を正確に伝えるために、正面図、平面図、側面図など、適切な数の投影図を選択します。必要に応じて断面図や部分拡大図も活用します。
  • 正確な寸法の記入: 製造に必要な寸法を漏れなく、かつ正確に記入します。基準となる寸法線や補助寸法線も適切に配置します。
  • 公差の明記: 部品の機能や組み立てに必要な公差(寸法の許容範囲)を指示します。JIS規格などに準拠した適切な公差を選定します。
  • 表面粗さの指示: 部品の表面の滑らかさや粗さを指示します。記号を用いて適切に表現します。
  • 材質の明記: 使用する材料の種類を明確に記述します。材料記号や名称を用います。
  • 熱処理・表面処理の指示: 必要に応じて、熱処理の種類や表面処理の内容を指示します。
  • 注記の活用: 図面だけでは伝えきれない情報(例:バリ取り指示、面取り指示、特殊な加工指示など)を注記として追記します。
  • 尺度の明記: 図面の縮尺または実寸表示を明記します。
  • 第三角法での作図: 日本では一般的に第三角法で投影図を作成します。第一角法との混同を避けるため、図面に明記することが望ましいです。

4. バラシ図(分解図)作成の重要なポイント

分かりやすく、組み立て・分解作業の助けとなるバラシ図を作成するために、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 部品の配置: 組み立てられた状態から、各部品がどのように分解されるかをイメージしやすいように配置します。
  • 部品番号・符号の付与: 各部品に一意の番号や符号を付与し、部品表と対応させます。
  • 組み立て順序の指示: 組み立てる順番を線や矢印で明確に示します。分解の順序も逆の手順で理解できるように工夫します。
  • 部品間の関連性の表現: 部品同士がどのように結合しているか(ねじ、ボルト、ピンなど)を補助線などで示します。
  • 標準部品の省略: ボルト、ナット、ワッシャーなどの標準部品は、必要に応じて省略したり、まとめて表現したりすることで、図面を簡略化できます。
  • アイソメ図の活用: 立体的な構造を把握しやすくするために、アイソメ図(等角投影図)でバラシ図を作成することが効果的です。
  • 部品表との連携: バラシ図に付与した部品番号・符号と、部品の名称・数量などを記載した部品表をセットで提示します。

まとめ:部品図とバラシ図は製造業の共通言語

部品図とバラシ図は、設計者の意図を製造現場やメンテナンス担当者に正確に伝えるための、製造業における共通言語と言えます。それぞれの図面の役割と作成のポイントをしっかりと理解し、正確で分かりやすい図面を作成することが、高品質な製品づくりと効率的な作業に繋がります。

この記事が、部品図とバラシ図に関する理解を深める一助となれば幸いです。

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