バラシ外注で『公差抜け』『加工不可』を防ぐには?機械設計の意図を正確に伝える3つの技術的指示
「外注した部品図にはめあい公差が入っていない」「隅Rが加工できない形状で上がってきた」…そんな失敗を防ぐために。機械設計者がバラシ(部品図展開)を依頼する際、最低限伝えておくべき「機能部位」「加工前提」「組図矛盾」の扱いについて解説します。
トラブルを未然に防ぐためにできること
組立図(組図)から部品図への展開、いわゆる「バラシ」を外注した際、こんな図面が納品されて頭を抱えたことはありませんか?
- はめあい公差の欠落: ベアリングやピンが入る穴なのに、H7公差が入っておらず一般公差で描かれている。
- 加工不可能な形状: ポケットの隅がピン角(R0)になっていて、エンドミル加工が考慮されていない。
- 幾何公差の認識不足: シャフトの同軸度や、取付面の平面度指示が抜け落ちている。
これらは単なるトレースミスではなく、オペレーターが「その部品が機械の中でどう動くのか(機能)」を理解できていないことが原因です。
とはいえ、すべての箇所に詳細な指示書を作る時間はありません。 今回は、忙しい設計者のために、「ここだけ押さえれば大きな事故は防げる」という、機械設計特化型の指示出しポイントを3つご紹介します。
ポイント1:「機能部位(はめあい・基準面)」だけは明示する
組図の全寸法に公差指示を入れるのは非現実的ですが、機械の性能に関わる「重要な箇所」だけは、必ず指示が必要です。
オペレーターは「形」は見えても「重要度」は見えません。以下の要素が含まれる箇所には、組図上に赤ペンやバルーンで一言添えてください。
- はめあい(Fit): ベアリング、ノックピン、シリンダーロッドの勘合部。「ここはH7/g6」等の等級指示、または「ベアリング圧入」といった用途指示。
- 基準面(Datum): 加工や計測の基準となる面。幾何公差のデータムとなる面。
- 摺動部・シール面: Oリングやオイルシールが入る箇所の表面粗さ指示(Ra1.6、Ra0.8等)。
「その他は一般公差(JIS B 0405 中級など)でOK」と全体ルールを決めつつ、「機能に関わるこの3箇所だけは守って!」とメリハリをつけるのがコツです。
ポイント2:「加工・後処理の前提」を共有する
同じ形状の部品でも、作り方によって図面の描き方は変わります。特にトラブルになりやすいのが「表面処理(メッキ・塗装)」と「ネジの下穴」です。
表面処理の「膜厚」考慮
アルマイト、硬質クロムメッキ、黒染めなど、後処理によって寸法変化が生じます。
- 「メッキ後の寸法で公差を保証するのか(メッキ前寸法を小さく描く必要があるか)」
- 「ネジ部はマスキングするのか、オーバーサイズタップを使うのか」 この方針が決まっていないと、現場で「ネジが入らない」トラブルに直結します。
タップ深さと下穴深さ
組図ではネジの有効深さしか描かれていないことが多いですが、部品図では加工のために「不完全ネジ部(余裕代)」や「ドリル先端角の円錐穴」が必要です。 これを「外注先の判断で適当に入れて」とするか、「JIS推奨値に合わせて厳密に入れて」とするか、方針を伝えておきましょう。
ポイント3:技術的指示③:組図にある「ウソ(矛盾)」の処理方針
3D CADが普及した今でも、2D組図には「ウソ(作図上の矛盾)」が残っていることがよくあります。
- 部品同士が0.5mm干渉している。
- ボルトの長さが足りず、有効深さに届いていない。
- 市販品(シリンダーやガイド)のモデル寸法がカタログ値と違う。
こうした矛盾に直面したとき、外注先にどう動いてほしいかを決めておくことが重要です。
- A:設計是正型(推奨) 「干渉している場合は、逃げ加工を追加してください」「ボルト長は適切な規格品に変更して部品表に入れてください」
- B:忠実トレース型 「組図通りに描いてください(干渉していてもそのまま)」
- C:報告型 「矛盾点は修正せず、雲マークをつけてリストアップしてください」
ここを曖昧にすると、外注先が良かれと思って勝手に形状を変え、結果として設計意図が変わってしまうリスクがあります。
AZA WORKSは「設計者の常識」で図面を描きます
これだけ細かい指示を出すのは大変だ、と感じられたかもしれません。 しかし、ご安心ください。AZA WORKS(アザワークス)の強みは、まさにこの「言わなくても分かる」技術力にあります。
当社は設計会社を母体としているため、機械設計の「当たり前」を共有しています。
- 加工性を考慮したモデリング: 「この隅Rではエンドミルが入らない」と気づけば、適切なRへの変更提案や、逃げ形状の追加をご提案します。
- 公差の適正化: 「ここはベアリングが入るから公差が必要では?」といった設計者視点での検図・フィードバックを行います。
- 熱処理・表面処理の知識: 焼入れ部品の研磨代や、メッキの逃げについても理解した上で作図可能です。
「CADオペレーターではなく、設計補助スタッフが欲しい」 「細かい公差や加工要件まで安心して任せたい」
そんな設計担当者様は、ぜひAZA WORKSにご相談ください。あなたの設計意図を、正確に図面へ落とし込みます。
